2010年2月25日木曜日
女性の股関節や大胸筋は治療してもらえない・・・・
股関節の痛みで苦しんでいる女性は相当に多い。妊娠・出産・育児に加えて家事全般を請け負い、おまけに仕事までしているのだから、疲労で痛み出して当たり前である。学生時代のスポーツの後遺症の場合もある。
しかし、おおむね、医師・整体師・鍼灸師・指圧・マッサージ師は、こういう部位に触れたがらない。わいせつ行為と思われるのが嫌なのだろう。
私は、平気で治療する。そうしていままでどのような治療を受けてきたのかを聴く。答えは皆おなじである。
どこに行っても、そこは治療してもらえませんでした。
鍼師が股関節に針をするとなれば、必要な部位まで、衣類をおろしてもらわねばならない。しかし、10年、15年と痛みに苦しんできた人は、ようやくそこを治療してくれる人に出会ったと思うらしい。決して変なふうには受け取らない。治療そのものは、至って簡単である場合が多い。せいぜい数回~10回もあれば改善する。
中には股関節を手術した後の痛みや不自由さを訴える人もいる。ある50代の女性は、医師には歩かないようにと注意されていたらしいが、針で治療をし、少しずつ歩いてもらって筋力を強化した。それで、ほとんど何の不自由もない生活ができるようになった。
その後も、年に一回はレントゲンで検査しているが、股関節の所見には悪化の兆候は現れていない。筋肉でガードしたのである。そのためには、股関節の痛みの原因になっていた筋肉の拘縮を取り除く必要があった。それは針でやるしかない。指圧やマッサージでほぐれるようなヤワな凝りではなかったのである。
ダンサーやバレリーナの故障の治療となると、ほとんど内転筋をいためているので、治療の部位もかなりきわどいところになる。ふともも内側の付け根なのである。
しかし、そういう人は、故障を治さないと舞台に上がれないのであるから、恥ずかしいなどということは言っていられないのだ。
どこに行っても治療してもらえないという人が、日本中に何万人いることであろうか? 腕に自信がないから、余計な心配をするのである。
大胸筋も同様である。女性は、大胸筋の治療をしてもらえない。しかし、この部位に関しては男よりも痛めているのが普通である。
こういうときは、「鍼灸師が最初に習うツボがここにありましてね・・・」と言いながら、そのツボを強めに押す。すると「痛あ~~」という声が出る。「2番目のツボはここです・・・」と言って、やはり強めに押すと「痛あ~~」という。
そこに浅めの針を肋骨の上に刺す。決して肋骨の間には刺さない。これが気胸防止の一番確実な方法である。そうすると、「あ~、息が楽にできる・・・。そんなところが凝っていたんですか?」などと言う。
そんなとこ、さわらないでください。
なんてことを言った人は一人もいない。
いままで誰もそこを治療してくれなかった・・・・・
と言った人は、数知れないが・・・・・
2010年2月24日水曜日
針治療は、検査にもなる。
しかし、まず、頭痛を消すツボで、痛みが消えるかどうか試してみればいいのだ。脳に異常があるのなら、針など効きはしない。針で頭痛が消えたのなら、それは肩や首の凝り(筋肉の過剰な緊張状態)に由来するものだから、脳を心配することはない。
むろん、定期検診は必要だろう。無症状のまま重大な病気が進行していることもあるからだ。しかし、それは、年に1回で十分だろう。
そういうルートで治療にきた人には、そういう説明をする。つまり、針治療は、検査にもなるのだ。
痛みやしびれから、「どこか悪いんじゃなかろうか?」と、内臓の病気を心配する人もいるが、そういう人には、
凝りをとって痛みが消えるのなら、内臓を心配することはありま
せん。針治療をしたあと3日しても症状が消えないのなら、近くの
病院で診てもらうのもいいでしょうけど・・・・
と言うことにしている。逆に、こちらから積極的に検査を勧める場合もある。肋間神経痛のような胸痛を訴える人の場合がそうである。心筋梗塞の前触れである ことがあるからだ。10年で、5人、そういう人がいた。そのうち、3人は、検査でも異常が出なかった。心筋梗塞を起こしていることがわかったのは、発作を 起こして救急車で運ばれてからである。ここでも、骨折と同じで「検査漏れ」が起きているのだ。
病院で検査してもらいましたか?
心電図に異常はないと言われたが・・・
たぶん、肋間神経痛でしょう。
そうして治療を何度か続けているうちに、心臓発作を起こした人が3人いる。3人とも、バルーン療法できれいに治った。その後、針治療にはきていない。
2010年2月22日月曜日
両股関節と左膝が人工関節の86歳女性
それで、家庭でマッサージをしてもらうように伝えた。リンパ液を流してやればよいのである。難しくはない。
それにしても、病院の手術と、それに比べれば手薄なリハビリのギャップはあまりに大きい。
以前、右膝を人工関節に変えた後、歩けなくなったという人が来た。やはり80歳過ぎの女性である。原因は、骨盤付近の凝りだったので、鍼で治した。4回の治療で、スイスイ歩けだした。
手術そのものは成功していたのであるから、リハビリの不首尾が、名医の手術を隠してしまっていたことになる。
長年の経験で、手術の上手下手は、だいたいわかるようになった。結局、職人的な腕を持っている人がうまいのである。
しかし、手術しなくても、針で治せる場合が相当数ある。私は、8割は治せる。膝にたまった水は、数回の治療でなくなる。しかし、膝を治療できる鍼師はほとんど居ない。
私も20年もすれば引退である。その間に縁のあったわずかな人を治療できるだけである。
リハビリの技術を底上げしないと、名医の手術も人を助けられなくなる。
2010年2月19日金曜日
2010年2月16日火曜日
困った付き添い・・・
仕事がやりづらい。待合室で待っていてください、といっても、何か理由をつけてじっと見ている。
こういうときは、患者も損をする。さっさと治療を終えてしまうからだ。サービス的なことは一切しない。必要な処置を終えたら、「ハイ。今日はこれで終わりです。」
もう来なくてもいいと思う。
そういうのは、付き添いとは言わない。ただの迷惑である。
2010年2月13日土曜日
治療と介護のはざまにいるお年寄りたち。
こういう人は、すでに介護の段階に入りつつある。こちらには、介護の技術はない。下手に抱き起こすのは危険なのである。肋骨など、簡単に折れてしまうから。
それで、この人にはたいへん気の毒だったのだけれども、治療をお断りして、デイケアを併設している鍼灸院を紹介した。
ところが、介護認定を受けていないというのである。それでは、サービスが受けられない。まず介護認定を受けないといけないのだが、そういうことに関する知識がまったくないのである。
お年寄り本人が何も知らないというのは、時折あるが、子供たちは何をしているのだろうかと思う。子供にとって、母親は不死身の存在である場合が多い。いつまでも元気でいてくれるものと思い込んでいるのである。
しかし、客観的に見ると、転んで骨折でもしたら、もう寝たきり、という状態なのである。このご婦人は、こういう状態にもかかわらず、自転車に乗っているという。
転んだら、寝たきりになるだろうと思う。
2010年2月8日月曜日
レントゲンの見落としと、針では治らない場合。
数日前治療にきた男性患者のことだけど、この人、ふたつの整形外科病院でレントゲン検査、MRI検査をしてもらって、軽いヘルニアでしょうから、しばらく安静にしていれば治るでしょうと言われたという。
こういう人はかなり治療しているので、軽い気持ちで引き受けたのだが、2回治療しても症状が消えない。杖がないと歩けないのだ。「これはおかしい、こんなはずはない」と思って、もう一度、股関節を検査してもらうように伝えて帰ったもらった。
それから3日ほどして、心配になってこちらから電話をかけたら、なんと「大腿骨が骨折していました」という。たぶん、疲労骨折なのだろうが、病的骨折の恐れもなくはないので、ベッドが空き次第入院することになったという。それまでは、自宅待機・・・
参った・・・。こちらは、一応、医師の診断を正しいものとして自分の治療をするのだが、画像診断のミスというのは、思ったより多い。ある医師が何枚もレントゲンを撮って異常なしといった人が、別の病院では、1枚のレントゲンで、「あ~、肋骨が3本折れてますね」と言われたケースもある。
こういうときは、鍼師としても困る。
おかしい、鍼が効かない、・・・・ひょっとしてレントゲンの見間違いかな? と疑って、別の整形外科で再検査を勧めると、骨折していることがわかったという例は、時々ある。
もっと困るのは、というか、いくら何でもそれはないでしょう!!というのが、手のしびれを治すのに首の手術をしなければならないと言われた人の場合である。こういう人の治療は、もう、10人以上やっているが、首の手術をせずにみな治った。少なくともしびれは消えた。
原因は、だいたいは、肘にあることが多い。触診すれば、「これ、首じゃないですよ。肘が原因ですよ」という触診所見が容易に見つかる場合が多いのである。
もっとも、造影検査をして脊柱管狭窄が見つかった場合などは、「それは針では治りませんよ。症状の緩和はできますが、狭くなった脊柱管を広げることはできませんから・・・」というしかない。
針治療と治療事故
針治療による死亡事故がたぶん20年ぶりに起こった。整骨院にアルバイトとして勤めていた学生(当然、免許取得前)が起こした事故らしいが、治療を受けた54歳の女性は、亡くなったようだ。原因は、針による両側性気胸らしい。現在、大阪府警が事情聴取をしているようだ。気胸という事故は、実は珍しくないのであるが、死亡事故というのは、滅多にない。
20年前に起きた死亡事故も、無資格者が起こしたものだった。胸郭周辺の針治療はすごく神経を使うものだが、どういう刺し方をすれば安全なのかを、学校でも職場でも教わることはない。せいぜい、「深く刺さないこと」というのが、気胸を起こさない方法として伝えられている程度だ。
針の効果というものは恐ろしいもので、堕胎のツボもあれば、不妊治療のツボもある。私は、不妊治療で4人成功したが、5人目の人が流産したところで、やめてしまった。ゾーミックやイミグランのお世話にならないといけないような強烈な頭痛を治めるツボもあるし、気管支拡張剤やステロイドが効かない喘息を止めるツボもある。ところが、これらのツボは、深いところにあることが多い。だから、ハイリスクなのだが、危険があるからやらないというのでは治療にならない。
ようするに、リスクコントロールがどれくらいできるかの問題である。そのリスクコントロールを学校で教えるかというと、鍼灸学校では、教えていない。
安全性と治療効果という問題は、治療家の生涯のテーマであるように思う。
針が折れる事故がネット上で2例見つかったが、ともに首に針が残っているのがレントゲンで確認されている。そのうち一例は手術で針をとるらしいが、しばらく経過観察をするのが妥当だろうと思う。針がそこにとどまっているより、手術の危険の方が大きいからである。
むかしは、捨て針とか、埋没針とか言って、わざと針を体に残す技術があった。いまでも、針が体に刺さったままという人(かなり高齢)がまれに治療に来る。こういう治療法が消えていったのは、外科領域から、手術の時に困るからやめてくれと言う要請が、鍼灸師会にあったからだと思う。
痛みもなく、かつ、そこから動く様子もなければ、無理に取り除く必要はないと思う。どうしても除去しなければならなくなったら、それは手術しなければならないだろうが・・・・