針治療による死亡事故がたぶん20年ぶりに起こった。整骨院にアルバイトとして勤めていた学生(当然、免許取得前)が起こした事故らしいが、治療を受けた54歳の女性は、亡くなったようだ。原因は、針による両側性気胸らしい。現在、大阪府警が事情聴取をしているようだ。気胸という事故は、実は珍しくないのであるが、死亡事故というのは、滅多にない。
20年前に起きた死亡事故も、無資格者が起こしたものだった。胸郭周辺の針治療はすごく神経を使うものだが、どういう刺し方をすれば安全なのかを、学校でも職場でも教わることはない。せいぜい、「深く刺さないこと」というのが、気胸を起こさない方法として伝えられている程度だ。
針の効果というものは恐ろしいもので、堕胎のツボもあれば、不妊治療のツボもある。私は、不妊治療で4人成功したが、5人目の人が流産したところで、やめてしまった。ゾーミックやイミグランのお世話にならないといけないような強烈な頭痛を治めるツボもあるし、気管支拡張剤やステロイドが効かない喘息を止めるツボもある。ところが、これらのツボは、深いところにあることが多い。だから、ハイリスクなのだが、危険があるからやらないというのでは治療にならない。
ようするに、リスクコントロールがどれくらいできるかの問題である。そのリスクコントロールを学校で教えるかというと、鍼灸学校では、教えていない。
安全性と治療効果という問題は、治療家の生涯のテーマであるように思う。
針が折れる事故がネット上で2例見つかったが、ともに首に針が残っているのがレントゲンで確認されている。そのうち一例は手術で針をとるらしいが、しばらく経過観察をするのが妥当だろうと思う。針がそこにとどまっているより、手術の危険の方が大きいからである。
むかしは、捨て針とか、埋没針とか言って、わざと針を体に残す技術があった。いまでも、針が体に刺さったままという人(かなり高齢)がまれに治療に来る。こういう治療法が消えていったのは、外科領域から、手術の時に困るからやめてくれと言う要請が、鍼灸師会にあったからだと思う。
痛みもなく、かつ、そこから動く様子もなければ、無理に取り除く必要はないと思う。どうしても除去しなければならなくなったら、それは手術しなければならないだろうが・・・・
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