2010年3月6日土曜日

アルコールと家庭内暴力

治療には、原則として1時間くらいかけることにしている。何度も治療しているうちに、気心も知れてきて、家庭での問題などを話すようになる人もいる。ひとはみな、それぞれの悩みを持っているものだと思う。何不自由ない生活をしているように見えても、それはあくまでも傍目(はため)でしかない場合が多い。

いろいろな問題の中でも、かなり深刻なのが、家庭内暴力である。これは、本人が自ら精神科にでも治療に行けば解決する問題だろうが、そういうことはあり得ない。暴力を受ける家族が、精神を病んでしまうことはいくらでもあるが。

ある人は、夫が毎晩3時間以上も、酒を飲んでは自分を罵倒することで、とうとう統合失調症を発症してしまった。薬物療法で、一時は寛解したのだが、ご主人の罵倒が原因で再発し、離婚して精神病院に入院してしまった。

その病院の院長の応対を母親から聞いて、いささか不安になった。治療する前から

 これは治らん!!

と言ったというのだ。「馬鹿か・・・」と思った。他の病院(そこは運悪くベッドが満床で入院できなかった)では、服薬しながらであれば、普通に暮らせるようになりますと、言われていたのに・・・・

それから8ヶ月ほどの間、母親(もう八十歳をこえている)が治療に来るたびに様子を効いていたが、徐々に寛解していって、いまは、普通に会話もできるという。主治医は、「8割なおりましたね。あと2割です」といっているという。

良い医師に診てもらっているのだと思う。「これは治らん!!」と言った院長が治療していたら、本当に治らないだろうと思う。というより、薬物療法の技術が、ないから治せないのだろう。「治らん!!」ではなくて、「私には治せん!!」のだろう。

 家族で花見ができたらいいですね。

と言った。父親は85歳、母親は82歳である。人生の終わり近くになって、楽しいひとときを過ごせれば、それはうれしいことだろう。我が子の先行きを心配しながらの老後の生活など、よいものであるはずがない。

 桜前線が近づいてきたら、家族での花見を話題にしようと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿