鍼師が金属についての基礎的な知識を学んでいないことは大いに問題だと思う。金属を専門に扱う分野は冶金(やきん)学と言われる。また、金属疲労などは、金属の材料力学で学ぶ。応力集中という現象を知らずに針をするのは、いささか危険である。
なにも、専門的に学ぶ必要があると言っているわけではないが、針治療に必要な知識、つまり、針の製造方法や、金属の基本的な性質などは、知っていた方がよいし、曲がった針の表面がどのようになっているかくらいは、顕微鏡で見て知っておいた方がよい。
金属は、結晶構造を持っているが、そのことを、どれくらいの鍼師が知っているだろうか? 曲がった針の表面が、格子状に滑っていることをどれくらいの治療家が知っているであろうか?
厚生労働省は、針灸学校の1年生の時に、針の製造方法と金属の基本的な性質くらいはカリキュラムに組み込んでおくべきだと思う。あるいは、針の製造元の社員さんを講師に招いて、臨時講習を開けばいいと思う。
いたずらに事故を恐れるのではなく、事故を起こさない治療技術を身につけることと、そのバックボーンになる基礎理論を知っておくことが大切なのである。
私は、ずいぶん深い針をするが、針が折れるという心配をしたことがない。というのは、針に余分な力を加えないからである。周辺の硬い組織を和らげながら針を進めていくので、針が折れるような力は加わらないのである。そういう運針(針運び)をする。
そういう運針術の背後には、金属の基本的な性質についての知識がある。いまはインターネットで必要な情報を即座に手に入れることができる時代である。
金属疲労・ステンレス・応力集中・カシメ のような言葉で、検索して調べてみると良いと思う。
どのような職業であれ、職人は、まず、道具について知るべきだのだ・・・・
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